2020年01月05日

第509回 相撲取りと貧乏神

いらっしゃいませ さとる文庫へようこそ

あけましておめでとうございます。
みなさま 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

年の初めは恒例の貧乏神さんのお話。
「相撲取りと貧乏神」というお話です。



相撲取りと貧乏神

あるところに大関間違いなしといわれた努力家の相撲取りがおりました。
毎日毎日 朝から晩まで一生懸命稽古をし、どんどん強くなっていきました。
ところがある日のこと 稽古中にけがをしてしまったのです。
相撲取りは焦りました。
 「あぁ大変なことをしてしまった。早く稽古ができるようにならなくては。」
親方は大変心配し、けががよくなるまで稽古を休むように言いましたが
 「いいえ。もう大丈夫です。」
といって聴きませんでした。
そうして無理をして稽古をしても強くなるはずがありません。
相撲取りはどんどん弱くなっていきました。
応援してくれた人々はがっかりし、にぎやかだった親方の部屋はひっそりとしてしまいました。

 「あぁ どうしたらいいのだろう。私がけがをしたばっかりに。」
と相撲取りが部屋でため息をついたとき
 「あ〜 うまかったの〜。ここのちゃんこ鍋は最高じゃ〜。」
とどこからかのんきな声が聞こえてきました。
 「だれだ?人が悩んでいるというのにのんきな声をだしているのは。」
腹が立って声のしたほうを見ると、そこにはみすぼらしい姿をしたおじいさんが寝ころんでいました。
 「お前は誰だ?いつのまに入ってきた?」
相撲取りは知らないおじいさんがいつのまにか部屋に寝ころんでいることにびっくりしました。
 「わしか〜。わしは貧乏神じゃ。」
 「び、貧乏神!?」
 「そうじゃ。お前に世話になろうと思っての〜。よろしく頼むぞ。」
 「もしかして私のけがも、部屋が寂しくなってしまったのも貧乏神さまのせいですか。」
 「お前のけがはしらん。」

それから相撲取りは貧乏神にでていってもらうには自分が強くなるしかないと思い、ますます無理をして稽古をしました。

そんなある日のこと 親方とおかみさんが大きなため息をつきながら
 「あぁうちにはまだたくさんの弟子がいるというのにどうしたらいいんだ。」
と話しているのを聞いてしまったのです。
相撲取りは責任を感じてしまいました。
部屋が苦しくなったのは貧乏神のせいです。
でも貧乏神は自分についているのです。

とうとう相撲取りは貧乏神と一緒に田舎へ帰る決心をしました。
親方とおかみさんは必死でひきとめましたが相撲取りの決心は変わりませんでした。

田舎では貧乏でも明るく働き者の両親が畑仕事をしていました。
両親は息子が強くなってりっぱな相撲取りになるのを、それはそれは楽しみにしていました。
ところがその息子が突然帰って来たのでびっくりしました。
 「おとっつあん おっかさん 私は相撲取りをあきらめて帰ってきました。どうか畑仕事を手伝わせてください。」
 「突然どうしたんだい?なにかわけがあるのなら聞かせておくれ。」

両親は息子の思いつめた顔を見てなにかあったにちがいないと思い、とても心配しました。
そして何があったのか話すように言ったのです。
両親には隠せないと思った息子はぽろぽろと泣きながら話し始めました。
 「じつは私には貧乏神がとりついてしまったのです。それからというもの私はどんなに稽古をしても勝てなくなってしまったのです。」
 「貧乏神だって!」
 「貧乏神?!」
両親がびっくりしていると急にみすぼらしい姿のおじいさんが現れました。
 「おまえの負けはわしのせいじゃないわい。」
 「ひやぁ!」
 「おまえさまが貧乏神さまですか。」
 「そうじゃ〜 これから世話になるの〜。それより腹がへったわい。」
 
今日は大晦日。
両親は貧乏神さまを精一杯もてなすことにしました。
 「貧乏神さま なにもございませんがどうぞあたたまってください。」
 「貧乏神さま さあさあ どうぞ」
 「うちは貧乏だからちゃんこ鍋はありませんよ。」
息子も両親に話せて安心したのか貧乏神に少し優しくなりました。
 「わし貧乏神なのにいいのかのう。」
貧乏神はとまどいました。
今までこんなに優しくされたことはなかったのです。

そうして夜は更けていき もうすぐ年が明けるという頃、ドンドンと戸を叩く音がしました。
 「はて 今頃誰だ?」
息子が戸を開けると、そこにはなんと福の神が立っていたのです。

 「やぁやぁ あけましておめでとう 福の神だ。今年から世話になるぞ。」
 「おまえは福の神」
 「おや 誰かと思えば貧乏神。こんなところでなにをしている。今年は福の神のわしがこの家に来たんじゃ。さっさと出て行け!」
さあ 大変です。
福の神と貧乏神がにらみ合って今にも取っ組み合いのけんかがはじまりそうです。

と、その時
 「福の神さま お願いでございます。どうぞ息子に 息子について行ってやってください。」
 「息子は真面目で一生懸命な子でございます。どうかどうか福の神さま。お願いいたします。」
両親が一生懸命 福の神さまにお願いをしたのです。
 「おとっつあん おっかさん それはだめです。私は負けてばかりで逃げてきたのです。」
息子はとても悲しそうに言いました。
 「おまえが負けたのはけがが治っていないのに無理ばかりしたせいじゃ。親方の言うことも聞かんかったのう。もちろんわしのせいでもないからの〜。」
と貧乏神が憎たらしく言いました。

福の神はそんな息子をじっと見て言いました。
 「わかった。息子について行ってやろう。しかし本当にいいのだな。」
 「はい。ありがとうございます。」
 「ありがとうございます。福の神さま。」

こうして息子は福の神さまと一緒に親方のところへ帰って行きました。
それから息子はけがをちゃんと治して、以前にもまして一生懸命 稽古をしました。
やがて部屋も大きくなり、とてもりっぱな相撲取りになりました。

さて貧乏神はというと、息子と福の神が家を後にしたころ ひとりトボトボと道を歩いておりました。
 「はぁ これからどうするかの〜」
すると「貧乏神さまぁ〜」 「貧乏神さま〜」と両親が後ろから追いかけてくるではありませんか。
 「貧乏神さま どこへいかれるんですか。うちへおいでください。」
 「貧乏神さま うちは貧乏ですがいつまでもいてください。」
 「いいの?わし貧乏神じゃぞ。」

それから貧乏でも明るく働き者の両親と貧乏神は仲良く暮らしました。



創作ブロガーのみなさま 
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

作品はオリジナルです。
朗読の無断配布はしないでください。

BGMはおとわびさま
音楽研究所さまより
お借りしております。

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posted by もぐら at 10:00| Comment(4) | オリジナル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする